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【読書】リーダーのふるまい大全——職場の「働きにくさ」を消すストレスフリーなマネジメント術

本田淳也さんの著書『リーダーのふるまい大全』を解説。3000件の職場相談から導いた「ストレスフリーなマネジメント」の核心と、働きにくさを消すリーダーの具体的なふるまいを章ごとに紹介します。

「頑張っているのに、なぜか職場がうまく回らない」——リーダーになって最初にぶつかるのが、このリアルな壁です。本書の著者・本田淳也さんは社会保険労務士として3,000件を超える職場の悩みに向き合ってきた経験を持ちます。採用から退職まで、給与・労働トラブル・メンタル不調など、現場のリアルを熟知した著者が提案するのは「ストレスフリーなマネジメント」という新しいリーダー像です。

リーダーの「ふるまい」が職場を変える

「少しだけ演技」するリーダーが強い

本書が繰り返し強調するのが、優秀なマネージャーは「少しだけ演技」するという視点です。これは偽りを演じることではありません。感情をそのまま職場に持ち込まず、部下が安心して動ける場をつくるために、意識的に「見せ方」を調整するということです。

この「少しだけ演技」が実現する職場の姿として、本田さんは3つのゴールを提示しています。部下に信頼される、会社に評価される、そして自分も疲れない——この3つが揃ったとき、マネジメントは初めてストレスフリーになると言います。

「働きやすさ」より先に「働きにくさ」を消す

多くのリーダーが「もっと働きやすい職場をつくろう」と努力します。しかし本田さんはその方向性を問い直します。働きやすさを足すより前に、働きにくさを消すことが先決だというのです。

不満や摩擦の火種が残ったまま「楽しい施策」を重ねても、根本は変わりません。まず現場のノイズ——過剰な業務量、不明確な役割分担、人間関係の摩擦——を丁寧に取り除くこと。その土台ができて初めて、働きがいやモチベーション向上の取り組みが実を結びます。

同様に、「仲がいい職場」も目指すべき最初のゴールではないと本田さんは言います。仲の良さと機能するチームは別物です。仲が良くても成果が出ないチームもあれば、関係はドライでも高い成果を上げるチームもある。リーダーが目指すべきは「仲の良さ」ではなく、それぞれが役割を果たせる「機能するチーム」だということです。

職場の悩みを章ごとに解決する

本書は序章を含む6つのパートで構成されており、職場に起きがちな具体的な問題をひとつずつ取り上げる構成になっています。

序章では「ストレスフリーなマネジメント」の全体像が示され、リーダーが自分も相手も消耗させないためのふるまいの基本的な考え方が提示されます。

第1章では「仕事が多すぎる職場」を扱います。業務の偏りや過剰な負担が生まれる構造的な原因を整理し、環境と負担を整えるリーダーの動き方が解説されます。

第2章では「なんとなくしんどい職場」に着目します。明確な原因が見えにくいメンタル不調や職場の停滞感は、実はリーダーの日常的なふるまいと深く結びついています。本章では心理的安全性を高めるための具体的な関わり方が示されます。

第3章では「孤立する職場」の問題を取り上げます。チーム内で孤立する人が出たとき、それをリーダーがどう察知し、どう動くべきかが論じられます。

第4章では「仕事に前向きになれない職場」の変え方を扱います。働きがいを高めるのはリーダーの大きな役割ですが、それは言葉だけでは実現しない——日常のふるまいこそが部下の意欲に直接影響することが解説されます。

第5章では「役割がよくわからない」という問題を扱います。自分に何が期待されているのかが曖昧な職場では、部下は力を発揮できません。成長できる仕事を設計するリーダーのふるまいが具体的に示されます。

一流リーダーは「問いかけて気づかせる」

叱る・甘やかすより難しいこと

部下がミスをしたとき、リーダーはどう対応すべきか。本田さんは三流・二流・一流のリーダーの違いをこう整理します。三流のリーダーは叱る。二流は甘やかす。では一流は何をするか——答えは「問いかけて、気づかせる」です。

たとえば「このミス、次はどうすれば防げると思う?」というひと言。叱責でも放置でもなく、部下自身に考えさせる問いかけによって、反省と改善が部下の内側から生まれます。外から押し付けた指摘は一時的な改善しか生まない一方、自分で気づいた学びは行動として定着しやすい。パワハラリスクへの意識が高まる現代のリーダーにとって、「問いかける技術」は不可欠なスキルです。

無意識のプレッシャーに気づく

本書が指摘するユニークな論点のひとつが、「無能なリーダーだけが使っている言葉」の存在です。言葉はその意味だけでなく、受け取る側の立場によって温度が変わります。たとえば「もちろん」という一言も、上司が使うと「それくらいやって当然だろう」という無言の圧力として部下に届くことがある。

リーダーの言葉は常に非対称な権力関係の中で受け取られます。本人は軽い気持ちで発した言葉が、部下には重く響く——このズレに気づけるかどうかが、信頼されるリーダーとそうでないリーダーを分けるのです。

考えすぎないリーダーが強い

優秀なリーダーほど「考えすぎない」というのも、本書の反直観的な主張のひとつです。現代のリーダーは判断すべきことが多く、常に頭を使い続けています。しかしその思考の過負荷こそが、判断の質を下げ、部下への対応を遅らせ、結果としてチームを疲弊させる原因になるとも言えます。

考えすぎないとは、無責任に判断を放棄することではありません。あらかじめ「こういうときはこう動く」という自分なりのルールを決めておき、毎回ゼロから悩む負荷を減らすということです。その分の余裕が、部下への細やかな気配りや、いざというときの的確な判断に使えるようになります。

優秀な部下が去る理由

「優秀な部下が退職を決意したのは、上司のふるまいが原因だった」——本田さんはこうした事例を何度も見てきたと述べます。退職理由として告げられる「キャリアアップ」「新しい挑戦」は多くの場合、建前です。本音のところでは、直属の上司との関係や、日常のふるまいの積み重ねが限界を超えたことが退職を決意させています。

優秀な人ほど他に行ける選択肢を持ちます。そして優秀な人ほど、上司のふるまいをよく観察しています。「この上司のもとで成長できるか」「この職場に居続ける意味があるか」——そうした問いへの答えを、リーダーの日常的な言動の中に見つけているのです。

まとめ

『リーダーのふるまい大全』が示すのは、リーダーシップを才能や性格の問題として諦めるのではなく、「ふるまい」という行動レベルで変えられるという可能性です。3,000件の職場相談から抽出された知見は、現場のリアルに根ざしており、読んだその日から試せるものばかりです。

働きにくさを消し、問いかけで気づかせ、自分の言葉の温度を意識する——これらはどれも特別な才能を必要としません。意識と習慣の積み重ねで、誰でも「ストレスフリーなリーダー」に近づけると本田さんは言います。チームを持つすべてのリーダーに手に取ってほしい実践書です。